アメリカ発の世界的な金融危機とそれに続く実体経済の悪化。発端がアメリカのサブプライムローンにあることは、誰もが承知している。だが、本オリーブへの投稿を見ると、その問題の根源について、まだ理解していない人が結構多いようだ。つまり、これまでアメリカ共和党政権や日本の自民党政権が執って来た、経済政策の根本的な思想が行き詰ったと言うか、間違っていたと云うことである。
読者の誰もが一度は、「新保守主義(ネオコン)」「新自由主義経済」「市場原理主義」「金融資本主義」という言葉のどれかを聞いたことがあるだろう。アメリカ共和党政権や小泉内閣以来の自民党政権が執っている経済政策の理論などを表すもので、いずれも同義語だと考えていい。経済学者が、厳密に定義づけすると、それぞれ意味が違うだろうが、だいたいは、時と場合によって使い方が違うだけである。
新自由主義経済とは元シカゴ大学教授のミルトン・フリードマン博士の理論にある。博士は、1976年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者である。シカゴ大学教授であったことから、シカゴ学派とも言う。またその教えを受けたビジネススクール生などを、シカゴ・ボーイズと呼ぶ。この学説を、僅かな字数で説明することは、非常に難しいし、不可能に近い。だが、素人なりに彼の学説の説明に挑戦してみたい。
フリードマンは規制のない自由主義経済を理想としていた。政府は、経済活動に関与せず、経済活動は市場のメカニズムに委ねると言うものである。これを市場原理主義とも言う。従って、国の経済政策は、貨幣の市場への供給量でだけで調整すれば良いとしている。これをマネタリズムと言う。要は、政府が公共工事などで雇用を創出するケインズの思想を否定したもので、「小さな政府」を目指している。
彼の理論は、70年代に軍事革命が起こった南米のチリで「実験」された。チリ出身のシカゴ学派の経済学徒が、軍事政権(ピノチェト政権)に呼ばれ、経済政策の顧問団を形成した。彼らは、国有企業の民営化、外資の導入、貿易と資本取引の自由化、財政赤字の削減、関税の引き下げ、労働市場の柔軟化などを行った。そして、インフレ抑制と景気回復を果たした。シカゴ学派の素晴らしさを見せつけたのである。
このように華々しい成果を挙げたこともあり、80年代に、イギリスのサッチャー首相やアメリカのレーガン大統領が、積極的に政策として取り入れた。だがチリでは、アメリカ資本による国営企業の買収・私企業化、高い失業率(18%)、労働者の低賃金、貧富の差の拡大があった。今の日本を思わすことが起こったのである。だが、それらは全て軍事政権によって抑圧され、外部には出て来なかった。
ある経済評論家は「フリードマンの理論が悪いのではなく、生齧りに使う者が悪い」と述べている。例えば、フリードマンは、教育や医療に市場原理を持ち込んだり、民営化したりすることに反対している。処が、日本のシカゴ・ボーイズである竹中平蔵氏や宮内義彦氏は、規制緩和、租税の平準化、外資の自由化に並んで社会保障の切捨て、医療費の削減、教育現場への市場原理導入を平然と唱えている。
日本にフリードマンの思想を政策として最初に持ち込んだのは、レーガンと仲の良かった中曽根内閣による国鉄の民営化である。当時は未だ東西冷戦時代であり、共産主義から資本主義経済を守るには、労働者を敵に廻すことが出来なかった。だが、小泉内閣は、共産主義の脅威が無くなったことを奇禍として、新自由主義のブッシュ大統領の歓心を買うために、竹中平蔵氏を起用して、積極的に経済政策に導入した。
(続く)
追記:通常国会が5日月曜日に開催された。この一年の日本の国民生活のあり方を決める国会である。先ずは首相が施政方針を表明するのが筋ある。処が、国会は中川財務相の財政演説から始まった。今回は、首相の施政方針について書くつもりでいたのだが、そう云うことで急遽テーマを変えた。そのため、漫然として、少し長くなりそうである。ご容赦願いたい。
<徳山 勝> ( 2009/01/07 20:12 )