中小企業が、銀行など金融機関から融資を受ける場合、担保を求められる。十分な担保を提供できる中小企業は別として、多くの中小企業は、その本社が立地する都道府県・政令都市が運営する信用保証協会の保証を付けて、融資を申し込んでいる。銀行は、融資先の中小企業が倒産しても、融資した元本を信用保証協会が補償してくれるので、安心して中小企業に融資できる。日本には、こう云う良い制度がある。
これは、世界的な金融危機、信用収縮をもたらした元凶であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と、基本的な考えは全く同じである。違うのは、信用保証協会が、保証を証券化して売買する金融商品にしていないことである。そしてその運営が、地方自治体の管理下にあって、その保証枠や金利(保険料)などが、議会の承認を得なければならないことになっていることである。
この信用保証協会の運営を定めたのが、「中小企業信用保険法」と言う法律である。その法律の第一条には、「この法律は、中小企業者に対する事業資金の融通を円滑にするため、中小企業者の債務の保証につき保険を行う制度を確立し、もって中小企業の振興を図ることを目的とする」とある。この法律が制定されたのは、日本がまだ連合軍の占領下にあった昭和25年12月、第3次吉田内閣の時代であった。
この法律のことを、筆者が知ったのは最近なので、その内容の変遷については、詳らかではない。だがこの法律の成立後、日本経済の発展と共に、時代に対応して、幾度となく改定されたことは、1〜3年ごとに改定・附則があることから容易に分かる。そして、この法律の目的が揺らいでいないことも分かる。戦後の混乱期にこのような政策を考えた先人は偉い。これに比べてその孫はどうだ、と野暮は言うまい。
法律制定時は、中小企業に資金を廻し、その復活・振興を図ることが第一であったのだろうとは、容易に想像がつく。今もその原則は変わっていないのだが、今は、信用不安に対する安全ネットの役割がクローズアップされている。先の第一次補正予算の成立によって、特定中小企業者向けに、新たに融資の保証枠が増えることになった。
中小企業庁のホーム・ページには、法律で定めた8つの要因で、中小企業の資金繰りが行き詰った場合、これまでの保証枠以外に、信用保証枠を拡大すると書いてある。この保証枠を使うには、本社のある地方自治体から、8つの要因に依る特定中小企業者であると認定されることが第一の要件となる。その要因としては、大型倒産企業への売掛金債権を保有し、資金繰りに窮した、売り上げが前年同期に比べ3%以上減じた、原材料価格が高騰しそれを売価に転嫁できないなどが挙げられている。
この信用保証枠を利用するには、法律に従って手順を踏む必要がある。先ず、自治体による認定だが、多くの自治体はこの認定期間を来年3月末までとしている。自治体によっては、認定を受け付ける窓口が朝から行列だとの話も聞く。第一次補正予算の9兆円の保証枠の認定ですら、これだけの時間が必要だと現場はみている。当然ながら、認定を受けただけでは、融資を受けられる訳ではない。保証協会・金融機関による審査がある。そして融資がなされ、実効が出るまでには、更に時間を要する。
28日の党首討論で、麻生首相は第一次補正で12月までは十分だと述べたが、実態を知らな過ぎる。こう云う事例を挙げると、景気対策を発表しただけでは、何ら意味が無いことが分かる。それを裏付ける予算が無ければ、現場は動かないのだ。動いても時間が要る。首相は「景気対策はスピードだ」と言うが、第二次予算案を国会に上程せずして、何を言うかである。
なお、株式会社などの企業でなく、ベンチャーなど個人でも条件が満たされた場合には、特定中小企業者として認定される。それに該当すると思う人は、先ずは自治体の窓口に相談に行くことである。再度書くが認定されても、融資を約束されたことにはならない。中小企業者向け融資は、第二次予算案に組み込まれるはずであったのだ。
なぜ、これを急がないのか。首相は中小企業者を殺す気なのかと言いたい。
<徳山 勝> ( 2008/11/29 20:28 )